院長挨拶

 平成13年11月に大分県で初めてのホスピス病棟として当院は開院しました。当時は、ホスピスに対する多大な期待や大きな誤解など様々な状況の中で、日々患者さんやご家族のために働いてきました。それから10年以上の年月が経ち、世の中の状況も変わってきました。一つはがん対策基本法の成立により、がん診療にかかわるすべての医療機関が緩和ケアを提供する事が不可欠となりました。これまでは、緩和ケアは末期がん患者がホスピスで受けるものという印象が強かったために、この法律の成立により多くの医療機関において、緩和ケアに取り組む機会となりました。もう一つは在宅医療を提供する医療機関の充実があります。この事によりこれまでは病院で最期を迎えていた患者さんにとって、自宅で療養するという選択肢が増えました。このような社会情勢の変化により、ホスピス病棟に求められる事も変わってきました。それはただ治療困難となった患者さんを受け入れるのではなく、高次機能の緩和ケアを提供する医療機関として役割を果たさなければならなくなってきました。自宅に帰りたくても、処置やケアが複雑で在宅での対応困難な方、痛みや苦痛症状が強く、濃厚な緩和ケアを提供する必要がある方、細やかな精神的ケアを必要とされる方などが、高次機能の緩和ケアを受けられる対象となり、それを支えるのが、私たちホスピス病棟の役割と言えるでしょう。

具体的に一般病院との違いとして、以下の事が挙げられます。

  • 当たり前のケアを、患者さんペースで丁寧に行う
  • 身体的問題だけでなく、精神的、社会的、スピリチュアルな問題にも取り組んでいく
  • 医療スタッフがチーム一丸となってアプローチしていく
  • ゆっくりと療養できる環境を提供できる

そして大分ゆふみ病院が目指すところとして、以下の事が挙げられます。

  • がん治療に疲れた患者や家族が、癒されるような環境(ハード面)とケア(ソフト面)を提供していく
  • ただ死を待つところではなく、最期まで患者、家族が共に生き抜く場を作っていく
  • 遺族となる家族には、死別の辛さはあるものの、この病院で過ごせて良かったと思えるような対応をしていく
  • 臨床研修や施設見学を受け入れ、大分県の緩和ケアの発展に寄与していく

 大分ゆふみ病院にこれからも多くのがんの辛い症状で苦しむ方々に来ていただき、「ここに来て良かった」と言われるような病院を目指していきたいと考えています。

平成25年9月30日  院長 一万田正彦